30条1項は,生活扶 助について居宅保護を本則とするものの,要保護者が,その精神的・身体的状況, 日常生活管理能力,金銭管理能力等に照らして居宅生活をすることができるもので あることを当然の前提とする趣旨のものであることは,同項ただし書の規定からも 明らかというべきであって,上記「生活保護法による保護の実施要領について」に おける取扱いもその趣旨に沿うものということができる。
そうであるところ,「基本方針」においては, ホームレスの抱える問題・状 況(精神的・身体的状況,日常生活管理能力,金銭管理能力,稼働能力等)を十分 に把握した上で,自立に向けての指導援助の必要性を考慮し,適切な保護を実施す る, 就労の意欲と能力はあるが失業状態にあり,各種就労対策を実施しても就 労が困難であると判断される者については,当該地域に自立支援センターがある場 合には,自立支援センターへの入所を検討するものとし,自立支援センターにおい て,結果的に就労による自立に結びつかず退所した者については,改めて保護の要 否を判断し,必要な保護を行う, ホームレスの状況(日常生活管理能力,金銭 管理能力等)からみて,直ちに居宅生活を送ることが困難な者については,保護施 設等において保護を行うものとし,この場合,関係機関と連携を図り,居宅生活へ 円滑に移行するための支援体制を十分に確保し,就業の機会の確保,療養指導,金 銭管理等の必要な支援を行う, 居宅生活を送ることが可能であると認められる 者については,当該者の状況に応じ必要な保護を行うものとし,この場合,関係機 関と連携して,再びホームレスとなることを防止し居宅生活を継続するための支援 や,居宅における自立した日常生活の実現に向けて就業の機会の確保等の必要な支 援を行う,旨定めている。
さらに,「基本方針」を受けて制定された前記「ホーム レスに対する生活保護の適用について」と題する通知においても,「基本方針」の 留意点として, ホームレスの抱える問題・状況の把握に当たっては,面接相談 時の細かなヒアリングによって得られる要保護者の生活歴,職歴,病歴,居住歴及 び現在の生活状況等の総合的な情報の収集や居宅生活を営む上で必要となる基本的 な項目(生活費の金銭管理,服薬等の健康管理,炊事・洗濯,人とのコミュニケー ション等)の確認により,居宅生活を営むことができるか否かの点について,特に 留意すること, 直ちに居宅保生活を送ることが困難な者については,保護施設 等において保護を行うこと, 施設入所中においては,ホームレスの状況に応じ て訪問調査活動を行い,必要な指導援助が行われるよう,生活実態を的確に把握し, また,居宅生活への円滑な移行に向けて,施設職員や民生委員等関係機関と連携を 図り,日常生活訓練,就業の機会の確保等の必要な支援に努めること, 保護開 始時において居宅生活が可能と認められた者並びに居宅生活を送ることが可能であ るとして,保護施設等を退所した者及び必要な治療を終え医療機関から退院した者 については,公営住宅等を活用することにより居宅において保護を行うが,保護開 始時において居宅生活が可能と認められた者であって,公営住宅への入居ができず, 住宅を確保するため敷金等を必要とする場合は,前記「生活保護法による保護の実 施要領について」第6の4の(1)のキにより取り扱うこと, 居宅生活に移行した 者については,関係機関と連携して再びホームレスとなることを防止し,居宅生活 を継続するため,及び居宅において日常生活を営むことの実現のため,「基本方 針」に掲げられている就業の機会の確保等の施策を有効に活用する等,必要な支援 を行うこと,等を規定している。
他方で,自立支援法3条2項は,ホームレスの自立の支援等に関する施策につい ては,ホームレスの自立のためには就業の機会が確保されることが最も重要である ことに留意しつつ,同条1項の目標に従って総合的に推進されなければならない旨 規定し,同法4条は,ホームレスは,その自立を支援するための国及び地方公共団 体の施策を活用すること等により,自らの自立に努めるものとする旨規定しており, 前記のとおり,「基本方針」においても,ホームレス対策は,ホームレスが自らの 意思で安定した生活を営めるように支援することが基本であり,このためには,就 業の機会が確保されることが最も重要であり,併せて,安定した居住の場所が確保 されることが必要であると定めている。
借入債務の保証
(1) 被告は,まず,本件売買取引により原告が取得した地位は,A社の事業経営に相当の影響力を与え得るものであり,配当還元方式が本来適用を予定している少数株主(同族株主以外の株主)の地位と同視できないと主張し,その根拠として,
@原告がA社における譲渡人の地位を裏付けていた株式のほとんどを取得し,同社における個人株主の中で保有株式数の最も多い筆頭株主の地位を得たこと,並びに
A原告が譲渡人及び譲渡人の相続人から借入債務の保証の便宜を受けることにより,実質的な金銭的支出を行うことなく本件株式を取得したことを挙げる。
しかしながら,@については,別表のとおり,本件売買取引後のA社における株式の保有割合は,B社,C社,譲渡人及び譲渡人の親族を併せた合計が47.9パーセントとほぼ全体の半分を占めるのに対して,原告はわずか6.6パーセントの割合にすぎず,また,B社及びC社における株式の保有割合をみても,譲渡人ないし譲渡人の親族が合計でそれぞれ75.0パーセント,59.7パーセントであるのに対して,原告はそれぞれ7.5パーセント,25.3パーセントにとどまっているのであるから,このような数値を見る限り,譲渡人の親族でもない原告が,A社の事業経営に実効的な影響力を与え得る地位を得たものとは到底認められない。
また,Aについても,原告は,本件借入につき譲渡人の保証を得た経緯について,金利等のコストの安い日本の銀行から借り入れるために,日本の銀行と取引のある譲渡人に便宜上保証人になってもらったものと説明しているところであり,その説明自体に格別不自然,不合理な点はなく,保証契約に付された約定の内容(前記第2の2(2)カの(ア)ないし(ウ))も,保証契約書の定型書式(甲9)の記載内容や銀行取引の実情等に照らして特におかしいものとはいえず,借入金の利息の返済は原告自らが行っており(甲13),他方保証人である譲渡人ないしその相続人が借入金の一部でも現に返済したような事情は認められないから,原告が譲渡人及び譲渡人の相続人から保証の便宜を受けることによって,実質的な金銭的支出を行うことなく本件株式を取得したとはいえず,またこのような事実経緯から,原告がA社の事業経営に相当の影響力を与え得るほどに譲渡人と密接な関係にあったとまでいうことも困難である。
むしろ,上述した原告のA社における株式の保有割合や,A社においては株式の譲渡につき取締役会の承認を要することとされていること(乙5)に照らせば,原告は,譲渡人及びその親族らのような同族株主とは異なり,会社に対する直接の支配力を有さず,当面,配当を受領すること以外に直接の経済的利益を享受することのない少数株主であり,その取得及び保有する株式の評価につき,評価通達の定める配当還元方式が本来的に適用されるべき株主に該当するものというべきである。
(2) 次に,被告は,本件売買取引は実質的には贈与に等しく,贈与税の負担を免れるため評価通達による評価額を上回ればよいとの基準で価格を定めたものにすぎず,このような場合にまで評価通達を形式的に適用すると租税負担の実質的な公平を害すると主張し,その根拠として,
@本件売買取引の株価決定経緯に関する原告の説明は信用できず,異議申立て及び審査請求の際には評価通達に定める配当還元方式によって決定した旨を明言しており,平成5年12月期の配当金額10円に評価通達の配当還元方式を適用すると1株当たり100円が算出されること,
AA社が高率の利益配当を行っている優良企業であることや,低金利の経済情勢からすると,10パーセントという高い資本還元率が設定されている評価通達どおりの配当還元方式で株価を算定する経済的合理性がないこと,
BA社の取引先ないしその関係者であるという本件売買実例に係る金融機関等との共通性からみても,原告に対してのみ著しく低い価格で株式
を譲渡する経済的合理性がないこと,
C本件売買取引前後の事情として種々の不自然な点が認められること,
D本件売買取引が譲渡人側の相続・事業承継対策の一環として行われたものであることを挙げる。
しかしながら,@仮に,本件売買取引の売買価額が評価通達に定める配当還元方式によって決定されたものであったとしても,それが評価通達において同族株主以外の株主が取得した株式についての原則的な評価方法である以上,不合理な価額決定の方法ということはできないし,A個々の非上場会社について当該会社に適用すべき最も適切な資本還元率を個別に設定することは極めて困難なことであって,そのためにこそ,課税実務上は,評価通達において一律に10パーセントという基準を設定しているものと解されるのであるから,A社に適用すべき最も適切な資本還元率についての特段の具体的な立証のない本件において,10パーセントという資本還元率を用いることが直ちに経済的合理性を欠くものということもできず,B同じ株式の売買取引であっても,その取引に向けられた当事者の主観的事情は様々であるから,株式の譲渡価格が買主ごとに異なること自体は何ら不合理なことではない。また,C被告の主張する本件売買取引前後の諸事情は,これに対する原告の主張や前記(5)で本件借入について説示したところに照らすと,直ちに不自然,不合理なものとはいえないし,D売買取引が譲渡人側の相続・事業承継対策の一環として行われたということが,本件売買取引が実質的に贈与に等しいとか,贈与税の負担を免れる意図が存したということに直ちにつながるものではない。
以上のような自立支援法及び「基本方針」におけるホームレスの自立の支援等に 関する基本的な考え方は,ホームレスの実態調査を踏まえたホームレスに関する現 状認識を反映したものであることは,「基本方針」の規定内容から明らかである。
以上のとおり,居宅保護は要保護者がその精神的・身体的状況,日常生活管理能 力,金銭管理能力等に照らして居宅生活をすることができるものであることが前提 となるものであり,他方で,自立支援法及び「基本方針」上,ホームレスの自立の 支援等に関する施策については,ホームレスの自立のためには就業の機会が確保さ れることが最も重要であるとされている。
そして,「基本方針」における生活保護 法による保護の実施に関する取組方針についての定め及びこれを受けた前記「ホー ムレスに対する生活保護の適用について」の定めは,上記のような居宅保護の性格 並びに自立支援法及び「基本方針」の基本的な考え方に基づき,かつ,ホームレス の現状認識を踏まえた上で,ホームレスに対する生活保護の適用に関する具体的な 取扱いを定めたものであって,「基本方針」においては,就労の意欲と能力はある が失業状態にあり,各種就労対策を実施しても就労が困難であると判断される者に ついては,当該地域に自立支援センターがある場合には,自立支援センターへの入 所を検討するものとし,自立支援センターにおいて,結果的に就労による自立に結 びつかず退所した者については,改めて保護の要否を判断し,必要な保護を行うも のと定め,前記「ホームレスに対する生活保護の適用について」においては,ホー ムレスに対する生活保護の適用に当たっては,居宅生活を営むことができるか否か の点についての確認に特に留意するものとしているのである。
これらに加えて,前 記のとおり,被告の設置,運営する自立支援センターにおいては,自立支援事業と して福祉相談等を行っているほか,就労による自立に結びつかず退所する者の希望 に応じて生活保護申請手続を援助するなどしており,退所後生活保護を受給するに 至った者も多く,その中には居宅保護を受ける者も含まれていること,一時避難所 においても,生活保護の適用を含む福祉サービスについての指導,助言を行ってお り,退所者の過半数が生活保護を受けて退所し,その中には居宅保護も相当数含ま れていること,以上の事実をも併せ考えると,被告健康福祉局において巡回相談を 委託している巡回相談員又は各公園事務所職員において,本件各公園内にテント等 を設置して起居の場所とし生活を営んでいる原告らを含む野宿生活者(ホームレ ス)に対し,高齢や病弱のため就労が困難な者を除いて,自立支援センター又は一 時避難所への入所を勧め,直ちに敷金を支給して居宅保護を開始するという方法に ついての指導,助言等をしていなかったとしても,自立支援法及び生活保護法の趣 旨に反するものということはできず,これをもって本件代執行手続の違法事由とす ることはできないというべきである。
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